夏の夜
まだ黄金の光を神さまの祝福、とか神秘めいたものを感じていた頃、
世界と触れ合う感覚に喜びを抱いていた頃、
私は信じていた。
世界はずっと変わらないし、
私もまた変わらない。
信じるとは、疑わないこと。
信じるとは、小さな静寂。
「
小さな静寂の世界にあって
触れる一つ一つに
小さな幸せの灯火を感じたのです 」
夏のまとわりつくようなじめじめした風に、星がぽつぽつ、と輝く夜空に。
耳を澄ませば、名も知らない虫の鳴き声が聞こえてきたからこそ。
バケツの水の中の使い終わった花火に寂しさを感じたからこそ、
突如として、漠然とした不安におそわれて。
信じる、に綻びを感じながら。
変化の波と訪れを感じながら。
溢れそうな涙を、心配はかけたくないからこそ、必死に悲しさ、苦しさ、飲み込んで。
「
世界は川に沈んでいて、
今日も、人も、何もかもが、
過去へと流れます 」
私が嵐の前だと感じる夏の夜の話。