日記
人は哀れな、存在だ。
雪の降る、静かな夜にそんな感想が涙と伝った。
ほらー、きみはやっぱりかわいいね。
ねー、あの雲の形おかしいねー。
硝子の、破片のような記憶が、散らばった廃虚。
光が、どこから差し込んでは、それらいつまでも、こだましてる。
大切だったんだと独白する。くだらないやりとりも、みんな君が大好きだからだ。
あなたとの、何気ない日常こそ。
やぁ。
そいつはあなたの足を引きずりながら現れた。
ねえ。
そいつは誰なんだろう。
溢れてゆく、吐息が、こんなにはかなくて。
白く染まったそれは、あっという間に冷たく。
血の、匂いがした。
そいつは、わたしに飽きたのか、通り過ぎていった。
わたしは屈したまま、無様に震えながら、嗚咽をこぼした。
血の、滴り落ちたあとが、あたらしい雪に埋もれてゆく。空気が、あまりにつめたくて肺が痛かった。
涙は枯れた。
光は閉ざして、わたしは現実にいた。
ふらふら、て立ち上がって、もう何時間も座っていたのかと呆れて。
嫌に重たい体を引き摺りながら、
そうしてあなたにおかえりを、いった。
たぶん、笑顔が凍りついていた。
だけど、嬉しかった。だって君はそこにいた。
真っ暗な部屋で、寂しい光をともして、
ひたすらに話しかけた。
不安だったんだ、怖かったんだ。君が、いなくなった気がして。